第1章 出会いと別れ
あの人の所へ行こうとしたのは良いものの、見つけた瞬間またどこかへ曲がってしまったため、わからなくなってしまった。
「はぁ……これじゃストーカーみたいだなぁ」
自分の行動にため息をついていると、
「陸、今日は何がいい?」
澄んだ声が聞こえた。
「天にぃの歌聴きたい!!」
次は元気な声が聞こえた。
ちら、と覗いてみると
「…!」
あの人だ!
天使の様な人が赤い髪の人に微笑んで話しかけていた。
今だ!と思い、室内に入ろうとした時だった。
「ーー♪」
息が止まった。
…様な気がした。
それほど、彼の歌声は私の心に突き刺さった。
ーーなんて綺麗なんだろう。
聴き入ってしまっていたのか、歌が終わっていたことに気づかなかった。
「俺、天にぃの歌大好きだなー!」
「ふふ、陸はいつもそう言ってくれるよね」
「うん!…あ、そーだ!俺が昨日言った本、借りてきてくれた!?」
あの人、天、っていう名前なんだ…。
「うん、持ってきたよ。……ん?」
「…どうしたの?」
「…おかしいな、ここに入れたんだけど」
……………本!!!!
私の当初の目的を思い出し、我に帰った。
「あっ、あの!」
私が声を出すと、人がいると思わなかったのか、2人とも驚いた顔で私を見た。