第2章 雪と桜色
「ねえ」
「ん?」
「このさ、『天くん』って書いてあるボックス、見てもいい?」
「え!?」
まだ私が許可を出してもいないのに勝手にボックスを漁り始める天くん。
あぁ、もうどうにでもなれ。
「…これ、全部僕の…」
「…うん、CDとか、ライブDVDとか…グッズとか……」
すると、天くんは少し表情を暗くさせた。
「…ごめんね」
「………」
「ここ2年、全然連絡しないで…」
「……もういいよ」
「良くないよ。…なんのために僕が今日来てると思ってるの?」
「え……」
「5年間会えなかった分を、今日、いっぱい愛してあげるためだよ。」
「……っ」
ちゃんと、覚えてたんだ。
「おいで」
手を大きく広げて優しい笑みをしてそう言ってくれる天くんに、私は甘えて、思い切り抱きしめる。
「5年分の声、聞いてあげるから、いっぱい吐き出して?」
あぁ、そんなこと言われると
「っ、寂しかったっ、」
「うん」
「3年間は連絡もたくさんしててっ、まだそんなにキツくはなかったけど…っ、でも、天くんがデビューして、連絡がだんだんなくなって、」
「…うん」
「もう、私の事なんか忘れたんじゃないかって、!」
全部、吐き出してしまう。
「でも、そんなこと言ったら天くん、困らせちゃうし、嫌われるんじゃないかって、」
「うん」
「私、天くんがそんなことするような人じゃないって、わかってるんだけど、…だけど、そう思わずには、いられなくて…」
「そっか…」
「今日だって…何の連絡もなかったし…」
「それは本当にごめんね」
「…でも、会えたから…許す。」
「ふふ、ありがとう」と言いながら、私の頭を撫でてくれる。
…落ち着く。
「…髪、長くなったね。」
「うん、伸ばした」
「そうなんだ。かわいいよ」
「えへへ」
さらさらと、髪を触られていると、
「ひゃ、」
つぅ、と背中を撫でられる。
「て、天く…」
「ねぇ、5年前に公園で言ったよね?」
「公園で…?……あ、」
「ってば本当にえっちだよね」
「ふぁ、」
背中を撫でられながら耳元で囁かれ、変な声が出てしまう。