第2章 雪と桜色
「んーーーっ!……今日はなんか集中出来たなぁ」
時計を見ると、午後5時を示している。
「もうこんな時間か…帰ろうかな」
…でも、今日はお父さんとお母さん遅いし…
「何か食べて帰ろうかな…いや、お金使わないどこ。帰ろう、普通に。」
ー外に出ると、雪がたくさん降っていた。
「ホワイトクリスマスだ」
イルミネーションに照らされて光る雪はとても綺麗で、天くんみたいだな、なんて思った。
「うう…寒い…陸くんがくれたマフラーめちゃくちゃあったかい。ありがとう…陸くん…」
ぶつぶつ独り言を言いながら歩いていると、家の前に誰かいた。
「……誰?」
白いコートに身を包み、黒い帽子を深く被っている。
少し近づいて見ると、帽子にかなり雪が積もっていた。
……え、大丈夫なの?この人…。
そしてまた近づいてみると、
ふわり、
優しく、甘い、香りがした。
「……………っ」
私、この香り、知ってる……
…でも、そんなはずがない。
何の連絡もなかったし、
朝だって、生放送の番組に出ていたし、
…全然、連絡もなかったし…
ぎゅう、と足を1歩前に出すと雪を踏み締める音がした。
その音に反応して、その人が、こちらを見た。
「……………っ、」
黒縁メガネの先にある薄い桜色の瞳と、目が合った。
「…」
いつもテレビで聞いていたはずの声なのに、
それよりも柔らかな声色で、
ああ、私の知っている天くんなんだと
「……っ天くん…」
涙が頬を伝う。