第2章 雪と桜色
「……今日も連絡なし、か」
朝起きて、私の誕生日になったらもしかしたら…と思ってスマホを見たけど、天くんからは何の連絡も来なかった。
あったのは、『今日は帰りが遅くなります』という母と父のメッセージだけだった。
「………もう、忘れちゃったんだ…」
じわり、泣きそうになるが、
何の連絡もないなら今日は休みだからお昼頃に図書館で勉強でもしてこようと計画をたて始める。
居間に行き、朝食を食べながらテレビをつけると、天くんが映ってた。
朝の生放送の番組にドラマの宣伝で出ているらしい。
「……かわいい、かっこいい…すき……」
重症だ。
「………会わないと死んじゃう………」
かなりの重症だ。
「恋愛ドラマかぁ…見たくないな」
天くんがデビューした時も初主演が恋愛ドラマでドキドキしながら見た覚えがあるが、その数分後に醜い嫉妬が芽生え、すぐにテレビを消した記憶がある。
「……本当に重症……」
はああ、と深い溜息をつき、食器を片付けた。
「…勉強しよう」
本当はお昼からの予定だったけど、落ち着かないから勉強することにした。
着替える為にクローゼットを開ける。
目についたのは、薄い桜色のワンピース。
桜色の物を集めるようになったのは、天くんがいなくなってからだ。
桜色が近くにあるだけで天くんが近くにいるような気がしたのだ。
「…馬鹿みたい。」
そう言いながらそれを着る私、本当に重症だ。