第2章 雪と桜色
「あ、ちゃん!」
「陸くん、調子はどう?」
病室に入るといつもと変わらない笑顔で私を迎え入れてくれた。
「全然元気!来週には退院出来るかも!」
「ほんと?じゃあお正月は一緒に過ごせるね」
「そっか、もうお正月か」
「今日はイヴだしね」
陸くんのお見舞いに来ている時が、唯一ホッコリできる時間だ。
天くんがいなくなってすぐ、体調を悪くして入院した時はいつも元気無かったけど、あれから5年経って、陸くんも頑張っている。
「明日、ちゃんの誕生日でしょう?俺、明日は大事な検診あって会えないから今誕プレ渡しとく!」
はい!と元気よく渡された物を見てみると、
「わぁ、マフラー!」
「えへへ、似合うと思ってネットで買ったんだ!」
ふわふわとした、触り心地がよく、暖かそうな桜色のマフラーだった。
(…桜色か)
「…やっぱり、双子だね」
「ん?何?」
「とっても嬉しい!ありがとう!」
「ほんと?良かったぁ。ちゃん、前に桜色が好きって言ってたから!」
そんなことも言ったっけかな。
「…あ、もうこんな時間か。早く帰って夕飯の支度しなきゃ。じゃあまたね!」
「うん!気をつけてね!」
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「…やっぱり、双子だね……か。」
静かになった病室に、少し高めの男の子の声が響く。
「………天にぃ、はやく帰ってきて…ちゃんと一緒にいてあげてよ……」
…じゃないと、俺……
「 ーーー」
その言葉は、深く、深い闇の中へと吸い込まれていった。