第1章 出会いと別れ
ーー誕生日から2週間が経ったある日のこと。
「それ」は突然やってきた。
「……うそ」
『今日、家を出るよ』
夏休みだからとダラダラ過ごしていると、天くんからそれだけ送られてきた。
「…もう2週間…経ったんだ……」
天くんと過ごす毎日が幸せで、楽しくて、あっという間だった。
私が動揺していると、天くんからまたメッセージが届いた。
『会いたい』
「………っ、」
私は急いでそこら辺にあった白いワンピースを着てちょっとだけ身支度を整えて家を出た。
天くん、
天くん、
私の家と天くんの家は近いはずで、
走っているのに遠く感じる。
はやく、はやく、
はやく会いたい。
天くんの家に着くと、黒い高級そうな車が1台、止まっていた。
「天にぃ待って!!…っ、待ってよ……!!ケホッ、ゲホゲホっ!!」
「陸…」
玄関へ行こうとすると、ドアの前には天くんのお父さん、お母さん、陸くんがいた。
…そして、深緑の色の髪をした、知らない人。
「天……くん…」
私が蚊の鳴くような声で名前を呟くと、天くんはこっちを見て、目を潤ませた。
…あぁ、泣きたいけど、陸くんという弟がいるから泣けないんだ。
必死に冷静さを保つ天くんを見て、私も苦しくなって泣きたくなった。
「…」
そして、どちらともなく抱き合った。
「いっぱいいっぱい、連絡してね」
「うん」
「私からも、するからね、嫌っていうほど。」
「…うん」
「浮気したら許さないんだから」
「のことしか頭にないよ」
「それと…それと……」
「ん?」
「…アイドルとしてたくさん輝く天くんのことも応援するし、アイドルじゃない時の天くんも私が支えるからね」
そう伝えると、抱きしめる力を強くして「…よろしくね」といつものように、優しい声で呟いた。
「……あとね、」
「ふふ、まだあるの?」
さすがに多すぎたのか天くんは少し笑って私の顔を見る。
「…………これから会えない分、5年後の私の誕生日に、……いっぱい、いっぱい愛してください。」