第1章 出会いと別れ
よく見ると、楕円形のシンプルな形で、桜色の石がはめ込まれていた。
「すっごく嬉しい…!」
「ほんと?よかった。」
「だってこの色、天くんみたい。…これ付けてればいつでもどこでも天くんと一緒みたいだね!」
「…………。…うん、そうだね」
急に顔を背け、もごもごとし始めた天くんに疑問を感じ、覗き込む。
「天くん、どうしたの?」
「………ほんとに…」
「え?……ん、」
キスされる直前、少ししか見れなかったが、
天くんが珍しく顔を赤くしているのが見えた。
「ふふ、」
「ちょっと、何笑って……」
キシ…と物音がし、2人して音がした方へと向く。
「え、あ、えっと………」
そこには、顔を真っ赤にした陸くんが立っていた。
「り、陸…!」
「みみみ、見てない!!見てないからね!!天にぃがちゃんとききき、き、キス……してる所なんて…!!!」
「ちょ、陸、父さんと母さんに聞かれ…」
「そ、そ、そそそう!父さんと母さんに遅いから見てきてって言われてそれで!!でも大丈夫だったって言っとくから!!ごゆっくり!!」
早口で捲し上げ、走って部屋へと戻って行った陸くんに、私たちは何も言えなかった。
「……バレた」
「え?陸くんになら別に…」
「違う、父さんと母さん。」
どういうこと?
そのことなら陸くん言わなそうだけど…。
「…陸、頑張って黙ってても、顔で何かあったことわかるから…。」
「あ…………」
…なるほど。
ありうる。
「ど、どうするの?」
「…まあ、今日は僕達の誕生日だし、ちょっと嫌だけど戻ろっか。」
そうだよね、年頃の男の子だし。
…でも大人になった天くんはこういうことが起きてもすぐ開き直って、冷静を保ってそう…。
「…天くん」
「なに?」
「大好きだよ」
「…ふふ、僕の方が好きだけどね。」
でもこういう会話には恥ずかしさを感じないんだな、と思った。