第1章 出会いと別れ
「ねぇ」
「ん?」
やけに静かな帰り道。
最初に沈黙を破ったのは天くんだった。
「…さっきの、僕と陸が一緒にステージ立ってるとこ見てみたいってやつ」
「あ、聞こえて……」
「本当に、見てみたい?」
「え……?」
どういう、こと?
いつもだったら優しく笑ってくるのに、どうして、
どうして、そんなに悲しそうなの?
「…えっ…と……」
そんな顔されたら、言えないよ。
「見てみたい」なんて。
「冗談だよ。」
「冗談…?」
とても冗談には見えなかったのに…
「あ、そうだ。誕生日プレゼント」
「あ、そうだよ!何でもいいじゃ困るんだよ?」
「うん、だから…」
「へっ……」
天くんのいい香りがすると同時に、耳がくすぐったくなった。
…これが、みみつぶってやつか
「僕、がほしいな」
「………………っっ!!!!」
瞬間、ぼふっ!!と音が鳴りそうなほど一瞬で顔が赤くなった。
「ふふっ、じゃあ、の家着いたし、僕は帰るよ。ばいばい。」
「………あ、…うん……」
さっきとは打って変わっていつもの柔らかな笑顔に戻ると、小さく手を振りながら天くんは帰って行った。
「なに…いまの……」
まだ顔が熱い。
ドクン、ドクン、と身体中に響く心音。
甘い、甘い、気持ち。
胸が、きゅううって苦しくて切ない。
「………すき」
小さく呟いた私の言葉は、
夕焼けの空に吸い込まれていった。