第1章 金曜日の夜 合コンと出会いと健全Day
ふと、その男性のグラスを見ると、中身が空になっていた。
実は、見る度に違う種類のお酒を飲んでいるようで、これは相当な酒豪なのではないか思った。
(私と飲み方がそっくり…)
その男性に新しい飲み物を聞こうとすると、その目の前に居る清楚系女子が先に声を掛けていた。
多分ではあったが、その清楚系女子の狙いは、その目の前のイケメン。
傍から見ても手に取るように分かる。
邪魔をしてはいけないと、自分のお酒だけを頼もうとしたが、その清楚系女子が何やらあたふたしていた。
(まさかあのイケメン、クールそうに見えて本当はグイグイ系男子?)
だが、あの端正な顔立ちで迫られれば、大抵の女性は落ちるだろう。
その清楚系女子が困るようなアプローチをされているのではないかと妄想したが、それは杞憂に過ぎなかった。
どうやら、彼が飲んでいたお酒の種類がすぐに見つからなかったらしい。
多分、彼が飲んでいたお酒は、あのお酒に違いない。
そう思い、彼の飲んでいたであろうお酒と一緒に、自分の飲み物を注文した。
「あ、ももさん、ありがとうございますっ」
清楚系女子からお礼を言われた。
お酒の事なら、少しだけ自信がある。
すると、その清楚系女子は安心したのか、また目の前の彼に朗らかに話し掛けていた。
そんな彼女の姿が微笑ましくて、私のお酒のペースも、それはそれは好調に進んでいった。
先程注文したお酒が飲み終わり、違う飲み物を選んでいると、今度は隣の女の子から話し掛けられた。
「ももさん、お酒強いんですね!」
先程の清楚系女子よりも、いささか派手な見た目ではあるが、裏表のない素直な印象を受ける女の子だった。
「ここの飲み放題、お酒の種類がたくさんあるから、全部飲んでみようかなあなんて」
「凄いですね!私はちょっと酔っぱらっちゃったみたいで…」
あまり飲んでいる印象は受けなかったが、頬がほんのりと赤くなっているようだった。
「大丈夫?お水頼む?」
「大丈夫です、ありがとうございます」
そう笑顔で返される。
先程の清楚系女子も、この女の子も、傍から見れば可愛い部類に入るだろう。
多分ナミは、自分と同じ武器で戦う子をこの場に揃えてはいないようだ。
それに私も、ナミとは違うタイプの女性に見えるはずだ。
(さすがナミ、抜かりない…)