第4章 旧友と看板娘 昔話と恋愛相談
コラさんとニコ屋が同じような笑みを浮かべ俺を見る。
居心地が良くてこの店に通っているはずだが、今だけは酷く居心地の悪いような気がした。
「それで、トラ男くんが浮かない顔をしてるのは、その女の子が原因なのね?」
「でも、さっきまで“ももちゃん“と一緒だったんだろ?」
「ああ…」
そう聞いてきた二人に、事の顛末を話した。
はしょっている部分は多々あるが。
「なるほどな…そいつァまたえらくこんがらがったもんだ」
「ナミの友達だったのね、その子」
「知っているのか?」
「ナミも随分前にこの店に来た事があるのよ。私とはそこで意気投合したの」
“ニコ屋“と“ナミ屋“、なかなかの最恐タッグだ。
そこら辺の男にとっちゃ相当な目の保養になるだろう。
「ナミちゃんは俺がこの店に連れて来たんだ」
「じゃあコラさんもももの事を知っていたのか?」
「いや、ローと同じく、昨日の合コンが初だ」
「多分ナミと来たのね。相当な美人さんだったしよく覚えてるわ」
「何故ソイツがももだと分かる?」
「女の子なのに相当お酒が強かったし、群がった男共を見事にあしらってたもの」
おそらくももで間違いはなさそうだ。
それにももと一緒に最恐タッグの二人が居たのであれば、群がっていた男の数も相当多かっただろう。
「ももちゃんをどう上手く口説くかだな…」
「コラソンはその子の連絡先を知ってるの?」
「いんや、俺はナミちゃん一筋だからな」
「あら素敵。でも、ナミに聞けばももちゃんの連絡先は分かるわよね?」
「それはそうだが…」
そう言いながらコラさんが俺に視線を向けてくる。
無理矢理抱いた女に愛の告白をしたとして、それが実る確率はどれぐらいあるか。
今まで色んな経験はしてきてはずだったが、まさかこんな事になるとは。
完全に想定外だ。
そう思うのと同時に、自分が確実にももに惹かれているのだと酷く実感した。
「なんか今、昔の事を思い出しちまった」
「昔の事?」
「家の事でゴタゴタがあっただろう?その時も今みてェな顔をしてたなァって」