第4章 旧友と看板娘 昔話と恋愛相談
コラさんの言うあの頃の俺は、まさに“反抗期“真っ盛りで、自分の恵まれた家庭環境に嫌気がさしていた。
他人からの評価、それに応えなければいけないというプレッシャー。
それから逃れるために、随分荒れた。
全部をぶっ壊したくなった。
そしてそんな荒れた俺を救ってくれたのがコラさんだ。
「懐かしいなあ、あの頃はいつローに殺されるかとビクビクしたもんだ…」
「何言ってんだ、そんなもんお構い無しにしつこくつきまとってきやがったじゃねェか」
そのせいもあってか、女が一切寄り付かない時期があり、“ゲイ疑惑“が浮上した事がある。
それを弁解するのも馬鹿らしく放っておいたが、今でもそれを真に受けているた奴が居たりもする。
「けどよォ、昔から言ってるじゃねェか、“素直になれ“って」
そうコラさんに言われた瞬間、急に頭の中がクリアになった。
まるで何かの呪文を唱えられたかのように、コラさんのその言葉が頭の中で鮮明に繰り返される。
そうだ、俺は何をウジウジ悩んでいるんだ。
“取るべきイスは必ず奪う“
それが俺のモットーのはずだ。
「腹が決まったみてェだな」
「ああ」
「昔と同じだな」
一気に体が軽くなった気がした。
それは酒のせいではない。
コラさんは昔もこうやって、俺の話を真剣に聞き、正しい道へと導いてくれた。
コラさんには素直に自分の気持ちを話せる。
そして昔、俺は家族にも素直に自分の気持ちをぶちまけた。
ももにも、同じように伝えれば良い。
その後の事はその時になって考えれば良い。
進まなきゃ道は開かない。
「家族との思い出と重なるなんて、なんだかロマンチックな話ね」
「応援してるからなロー!」
「…ありがとな、コラさん」
「なんのなんの!よし、今日はとことん飲むぞッ!」
「ククッ、いつも浴びるほど飲んで、死んだようにつぶれるくせに」
「そんな野暮ったい事言うなよ!今日は応援だけでもさせてくれッ!」
「酒を飲む口実か?」
「ロー、お前いつからそんな事言う子にッ…!」
俺よりも俺の事を理解している。
本当にこの人に会えて良かった。
そう度々思う。
調子に乗るだろうから絶対に口には出さないが。