第3章 漢ローの冒険記 よみがえる走馬灯
『初めまして、くろばももです』
一番最後に合流してきたももは、メイクや服装も他の女共とは違って控えで、そこも俺好みではあった。
四人居る女の中で誰と一夜を共にするかと言われれば、間違いなくももだった。
男のあしらい方、周りに気を配る姿勢、もものころころ変わる表情、全てから目が離せなかった。
しまいには、あの見た目で大酒飲みときた。
俺がももに興味を持つには、十分過ぎる材料がそろっていた。
店を出てももを誘おうと思った時には、既に他の参加者の男が声を掛けていた。
邪魔をするのは簡単だが、ももがそれをどう思うか分からない。
後ろ髪を引かれるような想いでその場を後にし、行きつけのBarで飲んでいたら、ももがやってきやがった。
この時は少しだけ、”神様”ってやつを信じたかもしれない。
モヤモヤした気持ちをすっきりさせるため、女を呼び出そうとしていたが、それをやめてももに声を掛けた。
女が一人で酒をあおっているというだけなのに、ももだとそれすら妖艶に見えた。
驚く事に名前を忘れられていたが、女に名前を忘れられた経験のない俺は、その事で更にももに興味が湧いたのだ。
教えた俺の名前を素直に呼ぶももに、正直たまらなくなったのを今でも覚えている。
ももと飲むのが想像以上に楽しかったため、最初は女として近付いたものの、一人の人間としてももと仲良くなりたいと思った。
女にこんな感情を抱いたのも初めてだった。
二軒目に誘った場所が場所だっただけに、少しバツが悪かったが、俺の提案にももは喜んで賛同してくれた。
二人で向かった二軒目は俺の行きつけの店で、始発まで飲めるには飲めるだろうがももを疲れさせる気はなかった。
俺が普段利用しているホテルの部屋を別々にとり、次の日も一緒に飲み明かさないかと提案すると、ももは笑顔でそれを承諾した。
ホテルに着くとももが、そこに併設されているBarで寝酒がてら最後に乾杯がしたいと言ってきた。