第2章 新たなる冒険 初めて生まれた感情
ローさんとホテルから出ると、目の前にえげつないレベルの高級車が止まった。
(何、この高級車…!?)
「た、タクシーか何かで帰るんじゃないんですか?」
「タクシーはあまり好きじゃない」
ああ、だから昨日もホテルに泊まる事になったのか。
「じゃあ、この車ってローさんの?」
「ああ、このホテルはよく利用してるからな。何があっても良いように自分の車を預けてる」
「なるほど…」
こんな高級ホテルをよく利用していて、更にこんなえげつい高級車を持っているなんて…
ホテルの人が運転席から降り、ローさんに助手席へとエスコートされる。
(こ、こんな風にエスコートされるの初めてかも…)
その後ローさんが運転席に乗り込み、車が発進した。
運転中のローさんは、やっぱりどこかテンションが低かったが、あっという間に自分のマンションに着いてしまった。
このままじゃいけない気がするのに、それをローさんに言い出すことが出来なかった。
ローさんが私より先に車から降り、ドアを開けまたエスコートしてくれた。
「長い時間、付き合わせて悪かったな」
「いえ、こちらこそ!何から何までお世話になりました!」
そう頭を下げると、頭を優しく撫でられる。
「もも…」
「はい?」
「…いや、なんでもない」
そう言うと、ローさんは車に乗り込んだ。
私が手を振ると窓からヒラヒラと手が出てくる。
高級車はあっという間に遠くへ消えていき、あんなに一緒に居たというのに、少し寂しい気持ちになった。
お礼の連絡をと思い、スマホの電源ボタンを押した時にとんでもない事に気付いた。
ローさんに連絡先を聞くのを忘れてしまっていたのだ。
「ど、どうしよう…」
これではスーツも返せないし、また会う事も難しい。
だが、ここで一つの憶測にたどり着く。
おそらく、連絡先を交換していない事はローさんも分かっているはずだ。
つまりこれは、一夜限りの関係。
セフレでもない。
その考えに、目頭が熱くなった気がした。
(もう会えないのかな…)