第1章 金曜日の夜 合コンと出会いと健全Day
ローさんが自分と同じことを思っていた事に、妙に嬉しくなる自分が居た。
(やっぱりモテるんだろうな…)
そうに違いない。
そんな事を思いながら、ローさんと乾杯をして、最後のお酒を飲み干した。
ローさんと最後の乾杯をしたあとに、自分だけお手洗いに向かったのが、なんとその間にローさんがお会計を済ませてしまっていた。
「ちょっとローさん、お会計!」
「ああ、もう払った」
「そうじゃなくて!今日は私が奢るって言ったじゃないですか」
「良い時間を過ごさせてもらった礼だとでも思え」
「そんなの私も同じですよ!」
「女に奢ってもらう趣味はねェ」
という事は、最初から私に払わせる気はなかったのだろうか。
ローさんはお金を受け取る気は一切ないらしく、ピシャリとシャットアウトされてしまう。
ローさんは少し頑固な所がある。
(今度マスターに金額をこっそり確認してみよう…)
店前での一悶着が終わり、駅に向かって歩いていると、見覚えのある道が見えてきた。
いわゆるラブホ街。
あの道には何度も入った事がある。
特定の誰かとではなく、色んな男性と。
妙に落ち着かない私を余所に、ローさんはその道を気にする素振りもなく歩いていく。
少し、少しだけ、せつない気持ちになった。
きっと、ローさんは私に興味がない。
女として。
そう思うと、心臓の奥がキュッとなった。
だが、その道を通り過ぎる直前で、急にローさんが足を止めた。
「もも」
「はい?」
「もう少し、ももと一緒に居たいんだが…」
そう真っ直ぐな瞳で私を見つめてきた。
そのローさんの発言に、少しホッとしたような、ガッカリしたような気持ちになった。
てっきりローさんは、他の男性とは違うと思い込んでいたから。
(行ってしまおうか…)
そう思った。
だが、今日は自分で健全Dayと決めた日。
いつもなら何も考えず、自然とホテル街に向かっているのだが、ローさんには、そんな軽い女だと思われたくなかった。
(他の女の人と一緒にされたくない…)
そう思った。