第1章 金曜日の夜 合コンと出会いと健全Day
「そういえば、ももは今彼氏は居るのか?」
「居ないですよ。ローさんは、彼女居るんですか?」
「いや、俺も居ねェ」
以外だった。
では、さっきドタキャンされたというのは、彼女ではないという事になる。
(彼女は居ない、という事は…)
「お前が考えている通りだ。女に困った事は一度もねェ」
「へっ?私、今顔に出てました?」
「ああ。だが、お前も男に困ってそうには見えねェな」
そうローさんに言われ、思わず口を噤む。
(どういう風に見られてるんだろ…)
酒の飲み方にも共通点を感じたが、まさか異性との付き合い方まで似ているとは。
「ま、まあ確かに、男の人に困った事はない…かも」
「お前ほど見た目がよければ、大抵そうだろうな」
(ローさんこそ!)
ローさんのような見た目の男性を、そこら辺の女子がそっとしておく訳がない。
そんなやりとりをしながらローさんとの時間を楽しんでいると、周りから”終電”という単語がちらほら聞こえてくる。
ローさんと過ごす時間が楽しすぎて、携帯のチェックを全くしていなかった。
終電を調べようとスマホを開くと、未読のラインが鬼のように溜まっていた。
どうせセフレ達からだろうと思いラインを閉じ電車を調べると、終電の時間まであと30分ほどだった。
最後の一杯を頼み、急いで飲むか否か。
今日の私は健全Dayなので、ラブホテルなどに行く気はさらさらない。
それ以前に、ローさんからは全く下心を感じなかった。
そんな風に思う男性と飲んだのも、私にとっては久しぶりの経験だった。
飲んだ後にラブホテルに行くというのは、大人になった男女にとっては当たり前の流れだろう。
だが、先程の会話からしても、ローさんも夜のパートナーに困っている感じではなさそうだ。
(もしかしたら、私が全然タイプじゃないのかも…)
そう思うと少し複雑な気持ちになったが、ローさんと過ごした時間が楽しかったので、それで良しとする事にした。
「私はあと30分ぐらいで終電です。ローさんは?」
「俺は電車でもタクシーでも、どっちでも帰れる」
「じゃあ、最後に何か一杯飲んでから出ませんか?」
「良い提案だ、俺もそう言おうと思ってた」