第1章 金曜日の夜 合コンと出会いと健全Day
何故自分がそんな事を考えているのか分からなかったが、意を決し、ローさんのお誘いを断る事を決めた。
「あ、あの…」
「まあ、さすがにもう飲めないか」
「へ?」
「これでも結構飲んだ方だが、正直飲み足りない」
「…飲み足りない?」
驚いた。
あんな眼差しで見つめてきて、ましてや場所が場所で。
角を曲がればすぐラブホ。
そんな状況で、二軒目のお誘い。
「…プッ、アハハハハハッ!」
自然と声を出して笑っていた。
そんな私を、ローさんが驚いた表情で見つめる。
「どうした?まさか今になって酔いが回ってきたのか?」
怪訝な顔でそう言う彼に、さらに笑いが止まらなくなる。
「フフッ、違うんです!私も、まだ飲み足りないって思ってたので!」
本当はそうじゃない。
むしろ、私の方がよこしまな気持ちになっていた。
そんな自分が本当に馬鹿馬鹿しくて。
「近くに良い店がある、ツマミも美味い店だ」
ローさんが、まだ私と居たいと思ってくれた事が、本当に嬉しかった。
「良いですね!そういえば少しお腹も空いてきました 」
「空きっ腹に酒を入れるのは体に良くねェからな」
そんなローさんの気遣いも嬉しい。
「体の事気にしてる飲み方じゃなかったですよ?」
「お前ェも同じようなモンだろうが」
同じ。
そんな言葉一つで、心の中が暖かくなる。
二人で飲み屋街へと逆戻り。
先程とは打って変わった清々しい気持ちに、まるで新たな冒険へと向かうような気持ちになった。