第1章 金曜日の夜 合コンと出会いと健全Day
だが、クールな印象が強い彼と、もしかしたら会話が弾まないのではないかと心配したが、全然そんな事はなかった。
むしろ、会話の波長も、お酒のペースも、飲み友達として最高の相性だと思うほど楽しかった。
男性の前で気兼ねなくお酒を飲んだことはあまりない。
大抵は私のペースについて来れないからだ。
「あ…」
「どうした?」
思い出した。
「スミマセン、めっちゃ今更なんですが…」
そう、彼の名前だ。
彼と飲むのが楽しくて、つい聞くタイミングを逃してしまった。
「トラファルガー・ローだ」
「え?」
「俺の名前が聞きたかったんだろう?」
何故、私の心の中の言葉が分かったのだろうか。
”トラファルガー・ロー”
特に理由はないが、彼にぴったりな名前だと思った。
「じゃあ、私も改めて自己紹介を…」
そう自分の名前を名乗ろうとすると、トラファルガーさんが”ももだろ?”と、私の名前を呼んだ。
「え、知ってたんですか?」
「くろばももだろ?記憶力は良い方だからな。一度聞けば大体覚えてる」
イケメンな上に、頭まで良いとは。
「知ってたなら、知ってるって言ってくれれば良かったのに!」
「それじゃあ面白くねェだろ?」
そう悪い顔をしながら笑ったトラファルガーさんに、思わずドキッと心臓が跳ねる。
「と、トラファルガーさんって、好きな子虐めるタイプっぽいですよね!」
まだ少し心臓がドキドキしていたが、それを悟られないよう、会話を切り出す。
「…そうかもしれねェな」
「やっぱり!」
「イジワルついでだ。俺の事を名前で呼んでみろ」
「な、名前で?」
「ああ」
ただ名前を呼ぶだけだというのに、それが妙に恥ずかしく感じた。
なかなか名前を呼ばない私を、トラファルガーさんがジーッと見つめる。
その空気に耐えられず、意を決して彼の名前を呼ぶことにした。
「ろ、ロー…さん?」
「なんだ?もも」
「…ッ!?」
(もうその笑顔は、保養を通り越して目に毒だ…!)
そんなドギマギした私を見て、ローさんがクククッと笑う。
やっぱり、ローさんは少し意地悪だと思った。