第1章 色違い 【ジャミル・バイパー】
「………もしも私が逃げ出そうとしたら鎖で縛って地下牢にでも閉じ込めて下さい。」
逃げるな、と心臓を鎖で縛られた。
「それでもまだ泣き喚いたら口を塞いで下さい。」
泣き虫で力もないくせにその目は酷く強情だった。
「それでも暴れる様なら殺して構いません。」
なんで、この女はこんなに与えてくれるのだろうか。
「それでも、貴方の隣に居たいんです。」
もう、この生暖かい小雨からは逃れられない。
「……辞めろと泣いても、逃がさないぞ。」
「それでいいって、言ってるじゃないですか。」
言い訳はもう出来ないから、俺は跡が出来そうな程彼女の両腕を握りこんだ。