第6章 幸せの記憶 【ジャミル・バイパー】
「それを聞いたのが、1番嬉しかったよ。」
「………え、あ……。」
あまりにも近い距離に私が言葉を失っているとジャミル先輩はソレを面白そうに笑って、私の額に軽く唇を付けてから、真っ直ぐこちらを向いた。
「俺は、お前の事が好きだからな。
お前に祝われる事が、何よりも嬉しかった。」
「………え?」
「…俺は人の気持ちに鈍くはないぞ?」
「……いたっ!!」
戸惑う私の額を軽く指で弾いた先輩は、茶化すような声色で話しながら私の頭を癖のように撫でた。
「俺の事を好きなくせに、なぜ来ないと苛立っていたが。…俺も伝えてないないのが悪かったな。」
「あ、ありゃ。お見通しってやつですか…。」
「あぁ、お前は本当にわかり易いからな。」
この人には隠し事は出来ないようだ。と、観念した私にジャミル先輩は歪な鉱石を見せつけた。
「それと、いけ好かないタコ野郎の魔法が掛かった石で俺が満足するとでも思ったか?」
「………え!?」
そんな事を言われても、その鉱石は私の苦肉の策であってそれ以上の物は思いつかないし、手にも入らないのだが。と慌てる私をジャミル先輩は面白そうにひと笑いしてから、__ギュ。と抱きしめた。
「………お前が欲しい。
まぁ、今回はこの石で我慢してやるが。」
甘ったるい声出そう呟いた先輩は耳元に口を近づけて誘うような声色で言葉を紡ぐ。
「……来年の誕生日は、お前の全てを寄越せ。」
まってくれ、とても色っぽくてとっても嬉しいが、この人は来年まで何もしないつもりなのだろうか。
「え、ら、来年まで貰ってくれないんですか!?」
「い、1年位は…待たないと。
耐え症が無い様でみっともないだろ。」
案外その辺硬派らしいこの人の為なら、私はきっと何でも差し出してしまうんだろう。
「コレじゃ…満足しないなら貰ってください!」
もしも、私を好きというのが本当で、私が彼の贈り物になるのなら幾らでも差し出したいと思う。