第6章 幸せの記憶 【ジャミル・バイパー】
「…宴も、贈り物も…本当は嬉しかったんだ。」
そう言ったジャミル先輩はキュッと私の服を掴む。
「まるで俺が1番の日の様で…。」
その言葉の重さは、なんの弊害もなく幸せな人生を送ってきた私には理解は出来ないんだろう。
それでも一つだけ、私の知っている事実がある。
「ジャミル先輩の日なんですよ。
皆、ジャミル先輩を祝いたくて集まったんです。」
あの宴に集まった皆は、ジャミル先輩の誕生日のお祝いをしたかったからあんなに楽しそうだったんだろう。詰まるところあの日の主役は間違いなくジャミル先輩で、この人が望んでいる1番が沢山溢れた日だったことは確かな事実だったはずだ。そう思い、素直にソレを告げた私の頬をジャミル先輩は不満気な顔で__フニっ。と両側へ引っ張った。
「だから、お前が居ないのが気に入らなかった。」
「ご、ごめんなひゃい。」
あの日、気後れなどしないで顔を出しておけば良かったと。失礼な自分に罪悪感を感じていると、クスクス笑ったジャミル先輩は楽しそうに語り出した。
「…何でお前だけ顔を見せないんだと。
わざわざオンボロ寮まで偵察に行かせた位だ。」
「え、えぇ!?」
「それなのに寮にも居ない。」
「う、宴に居ましたからね…一応。」
そんな事知らなかった…。と目を見開く私の頬を包んで、ジャミル先輩は__コツン。と額をつけた。