第6章 幸せの記憶 【ジャミル・バイパー】
「それでは監督生さんジャミルさん。良い夜を。」
最後に振り向いてそう言ったアズール先輩は、
いつも通り、品のいい腹黒な笑顔だった。
「あ、嵐の様でしたね。」
いい意味でも悪い意味でもあの3人は嵐の様だ。
そんな印象を素直に口にした私の頭にジャミル先輩は__ポンッ。とあやす様に手を置いた。
「あぁ、全くだ…。お前も頼るところを考えろ。
そもそも俺の誕生日ごときでそんなに…。」
ジャミル先輩は察しが良くて、何時も見透かした様に正解を言い放つが、今言ったこの言葉だけは私の為にも否定しなくてはならない。
「ご、ごときじゃないです!!」
俺の誕生日ごときでなんて言って欲しくないんだ。
「私にとっても、大切な日なんです。」
私の好きな人の誕生日。隣にいるだけで、
ドキドキして、微笑まれたらふんわり幸せになれる。
「私…お祝い遅れちゃいましたけど。
ごときなんて………もう言わないないで下さい。」
そんな素敵な人が産まれた日。
ソレをごときだなんて、
そんな言い方は本人が相手でも許せなかった。
「…誕生日、おめでとうございます。」
「………あぁ、ありがとう。」
そんなめいっぱいの気持ちを込めておめでとうを伝えるとジャミル先輩は珍しい位に目じりを下げて笑ってくれた。
「…楽しかった。」
「……え?」
楽しかった。と小さな声で呟いたジャミル先輩は私の肩に顔を埋めてポソポソと話し出した。