第6章 幸せの記憶 【ジャミル・バイパー】
「俺、1個も楽しんで貰えなかったって…思って
…っ…何も…出来なかったって…うわぁぁっっ!!」
「や、やめろ!!抱きつくなっ!!!」
勢いよくジャミル先輩に飛びついたカリム先輩を可愛らしいなと眺めていると、いつの間にか横にいたフロイド先輩が天井の映像を指さした。
「あ、見てぇ。小エビちゃんじゃん。」
「………あ、さっきの…。」
「み、見るな!!コレはどうやれば止まる!!
か、カリム!!鼻水を付けるな!離れろっ!!」
「う、うぇえええんっ!!」
その映像には先程バルコニーに現れた私とソレを部屋に招き入れるジャミル先輩の姿が写っていた。
「コレも嬉しかった記憶なんですか?」
「…う…。(こんなの罰ゲームじゃないか。)」
コレの何処が嬉しかった記憶なのだろうか。映像は『くくっ、何だ。宴に来ていたのか。』というジャミル先輩の声を最後に__プツリ。と消えた。
「だからジャミルさんは宴の時に少々不満気だったんですね。成程、そういうことですか。」
光が消えて月明かりだけになった廊下に楽しそうなアズール先輩の声が響いた。
「………お、お前は本当に……はぁ。」
ジャミル先輩がその声にまた額に手を当てて、ため息をつくと、ずっとジャミル先輩に絡みついていたカリム先輩をフロイド先輩が_ヒョイッ。と抱き上げた。
「…らっこちゃーん、かぁえろっ!!」
「…うわぁ!!凄いな背が高くなったみたいだ!」
軽々とカリム先輩を肩車したフロイド先輩をひと笑いしたあと、ジェイド先輩がニッコリとジャミル先輩の目の前に立って胸に手を当てお辞儀をする。
「カリムさんは僕達が責任をもって寮の部屋へ返しますので、ご心配なく。」
「…………はぁ…。わかった。」
もう好きにしろ。とため息ををついたジャミル先輩を気にもせずオクタビネルの3人はカリム先輩と一緒に私達に背を向けた。