第6章 幸せの記憶 【ジャミル・バイパー】
「気の所為な訳がありませんよ。」
「ウミヘビ君てぇ、照れ屋だよねぇ~。」
「コラコラ、本当の事を言ってはいけませんよ?」
「お、お前らまさか…。」
「え、なんで…。」
何故、オクタビネルの3人がココに居るのだろうか。と目を丸くしていると、昼間と同じ品のいい腹黒な笑顔を称えたアズール先輩が誇らしげに語り出した。
「カリムさんからもお願い事をされていまして。」
「(成程、だからお値打ち価格だったのか。)」
成程、つまりお値打ち価格の理由はカリム先輩から既に幾らか報酬を貰っていたからか。と納得した私をアズール先輩はニヤリとひと笑いしてからわざとらしい声で石にかけた魔法の説明を始めた。
「1番最近起こった楽しかった記憶を共有できる魔法がその石にはかかっているんですよ。」
「………な”っ!?」
何故か慌てだしたジャミル先輩を横目に見つつ、私はほんの少し目頭に熱を感じた。
「楽しかった…記憶。良かった…。」
カリム先輩に、失敗なんかじゃ無かったですよ。と心の中で呟いていると、グズグズと駄々を捏ねる子供の様な声が背後から聞こえてきた。
「ジャミルぅ~。」
「か、カリム……。」
物陰から現れたらカリム先輩の目にはこぼれ落ちそうなほど水分が集まってた。