第6章 幸せの記憶 【ジャミル・バイパー】
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「………ここなら誰も来ないだろう。」
「…ま、真っ暗。」
寮の端の真っ暗な廊下。そこにたどり着いてすぐジャミル先輩は歪な鉱石を手に取ってマジペンを出した。
「………ほら、照らしてみよう。」
そう言って__ポウっ。と石を下から照らして現れたら光景に私達はこれでもかと目を見開いた。
「……うわぁっ!!!凄いっ!!!」
「コレは、高等魔法だぞ。良くこんなものを…。」
プラネタリウムの様に天井に映し出される映像は光を帯びていて音声までついている。あの一瞬でこの魔法をかけたアズール先輩はやっぱり凄い人だと感心しながら、ソレを2人で見つめる。
「……この前の、宴。ですよね?」
コレは先日の誕生日の宴の映像だ。私もコソコソ覗いていたので間違いは無い。楽しそうなその光景に私が微笑んでいるとジャミル先輩は口元を隠して唖然とした声色で呟いた。
「……あぁそうだが…。まさか…。」
何故こんなに困惑した顔をしているのかは分からないが、私にも一つだけ分かることがある。
「………ふふっ、皆楽しそうですね。」
ジャミル先輩の視点で繰り広げられるその映像には笑顔ばかり。どんちゃん騒ぎをするその光景には、不快な顔など何ひとつとして見当たらない。
「騒がしいだけだろう…。」
「ジャミル先輩、嬉しそうですよ?」
「………気の所為だ。」
騒がしいだけだと、言いつつも何時もより柔らかい表情をするジャミル先輩を見つめていると背後から聞き覚えのある楽しそうな声が聞こえてきた。