第6章 幸せの記憶 【ジャミル・バイパー】
「私が、自分でお願いして来た様なものです。」
私の言葉にジャミル先輩は綺麗な目をパチクリと瞬かせて何かを確かめる様にゆっくり言葉を紡いだ。
「お前が…自分で、この時間に、俺の部屋に?」
「私の希望でこの時間にジャミル先輩の部屋に。」
ほぼ復唱に近いリズムで紡いだ私の真実にジャミル先輩はため息をついてから額に手を当てた。
「い、いや、意味がわかっているか?」
意味は【私がジャミル先輩に会うためにここに来た。】
それで間違い無いだろう。
「意味。…は、はい。わかってます。」
意味などそれしか無いだろうと。珍しく煮え切らない先輩に私がそう返事をすると、ジャミル先輩は少し戸惑った様子で私から目を逸らした。
「……ま、まいったな。唐突すぎるだろ。」
「………やっぱり、迷惑でしたか?」
そりゃ迷惑で唐突だよな。と申し訳ない気持ちがどんどんと湧いてきた私の肩を優しく掴んだジャミル先輩は、__はぁー。と深いため息をついた。
「……女なら慎みをもて。」
「……慎み……?…」
慎み…。とはどういう意味合いだろうか。一瞬そう考えたが、私は直ぐにその言葉の意味を理解して何とか弁解しなくてはと慌てて言葉を吐き出した。
「あ!!ち、違うんですよ!!
よ、夜這いとか、そういうのじゃ無いです!!」
確かにこんな夜更けに女が男の部屋へ訪れたらそう捉えられるのも無理は無い。が、そんな痴女だと思われるのも辛いし、今日は列記とした目的がある。