第6章 幸せの記憶 【ジャミル・バイパー】
「………な、何をしてるんだ。」
「あ、あの、中に入れて下さい…。」
「………は、はぁ?」
こんな時間にバルコニーから唐突に訪問者が現れたら驚くのも無理は無いよな。と申し訳なく思いながらも、ため息を着きつつ迎え入れてくれたジャミル先輩の後を私は背を丸めてついて行った。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「こんな時間にそんな所からどうしたんだ…。」
__カチャカチャとジャミル先輩がお茶の準備をする音と先輩のため息混じりの声が部屋に響く。
「えーっと。」
こんな無作法な訪問者にもお茶を入れてくれるのか。と静かに感動しながらも、なんと言い出そうかと悩んでいる私の前に__コトン。と紅茶の入ったカップを置きながらジャミル先輩はクスクス笑った。
「まぁ、概ねカリムがアズールに入れ知恵でもされて、お前は訳もわからずココに連れてこられたって所か?」
「うわぁ、当たらずも遠からず。」
とんでもなく鋭いその指摘は当たらずも遠からず。なんとも言えず片方の口角をひくつかせる私の前に座った先輩は、紅茶を口に含みながら片眉を上げた。
「ん?何か違ったか?」
確かに、ここに来たのはアズール先輩のアイデアの1部で、カリム先輩はそれを聞いて私をバルコニーに置いていってくれたのだが決定的に違う点がある。