第6章 幸せの記憶 【ジャミル・バイパー】
「宴も、贈り物も…失敗しちまってさ。」
「……カリム先輩…。」
この底抜けに明るい彼は、
きっと全力でジャミル先輩の為に頑張ったが、
思うようには喜んで貰えなかったのだろう。
そんな事を想い、
どうにか慰められないかと私が
カリム先輩に手を伸ばすと、
顔をスっと上げた先輩が頭をかきながら
__へへっ。と笑った。
「アズールから話を聞いてさ。
お前ならきっと上手に祝えると思ってな!!」
私なら。そう言ったカリム先輩は
胡座をかいたまま肩を窄めて、
足の指先をチョロチョロと動かした。
「…俺、鈍いらしいからさ。わかんないんだ。ジャミルが何をしたら喜ぶのかとか、どうやれば楽しいのかとか。結局、全部失敗しちまった。」
拗ねた子供のように口先を尖らせてから
また前を向いた先輩は私の肩を__ポンッ。と軽く叩いた。
「よろしくな!!お前なら大丈夫だ!!」
「……頑張り、ます。」
私なら大丈夫。
その真意は分からないが、カリム先輩のこの気持ちを受け取らないという選択肢は残されておらず、自信が無いまま了承をした私は安心しきった顔をしたカリム先輩にジャミル先輩の部屋のバルコニーへと置き去りにされた。
「……って言われたけど。」
いったいどうしたら。と思いつつも、
こんな時間にバルコニーにで立ち尽くしていては
ただの変質者だ。と、
私は意を決して__トントンと窓を叩いた。