第6章 幸せの記憶 【ジャミル・バイパー】
◆◆◆◆◆◆◆その日の夜
「……来ちゃったけど。」
とりあえず、寮の前までは来てみたものの
ジャミル先輩の部屋もうる覚えで、
そもそも不法侵入の様なこの行為にどうしたもんか。と、立ち尽くして居ると、空から快活な声が響いてきた。
「…おお!!来たかっ!!」
「え!?カリム先輩!?」
「ほら!乗れっ!!少し散歩しよう!」
「さ、散歩!?…う、うわぁっ!!!!」
まるで連れ去る様に私の腕を引いたカリム先輩は
私を魔法の絨毯に乗せると__ヒュン。と
勢いよく夜空に舞い上がって空中散歩を始めた。
「……凄い…。気持ちぃ…。」
初めは怖かったが、コレは中々気持ちがいい。
と目を細めた私にカリム先輩は嬉しそうに微笑んだ。
「そうだろう!!空は何処までも自由なんだ!」
カリム先輩は屈託のない笑顔でそう言い放ってから
胡座をかいてなんの躊躇も無く私に頭を下げた。
「ジャミルを頼む!!」
「………え?」
戸惑う私を、真っ直ぐなな赤色がじっと見つめた。
「俺じゃ、笑わせられなかったんだ。」
いつもより少し低めの声でそう言ったカリム先輩は
しょんぼりと自信なさげに目を伏せる。