第6章 幸せの記憶 【ジャミル・バイパー】
「クルーウェル先生にお願いして
私でもできる錬金術で作ってみたんですが。
その…………コレが私には限界でして…。」
ない知恵を絞って考え出した苦肉の策も
何とも中途半端に終わった私には
さらなる問題も追加される。
「なけなしのマドルも
このガラクタの為の材料費で綺麗さっぱり
消え去ってしまった。…ってとこでしょうねぇ。」
「うう…。そうなんですよ。」
マドルもアイデアも底を尽きた私は
それでも当日に…。と、招かれていた宴に
顔を出したのだが、絢爛豪華な贈り物と宴に圧倒され
手の中のガラクタでは顔も見せられない。
と、まだお祝いの言葉も言えていないのだ。
「等価は、次のメニューの試食で構いません。」
「………へ?」
問題の歪な鉱石を浮遊させ
マジペンを軽く振ったアズール先輩は
品がいい腹黒な笑顔で魔法がかけられたらしい
赤色の鉱石を私に手渡した。
「……コレを下から光で照らしてみて下さい。」
「……光で?」
「ええ、ライトでも何でも大丈夫ですよ。」
それになんの意味が…。と
首を傾げる私の目を覗き込んで
口元に人差し指を添えたアズール先輩は
妖艶な笑みを浮かべた。
「その代わり、暗いところで…。」
「く、暗い…ところ。」
詰まるところ、
新メニューの試食という【お値打ち価格】で
手に入れたこの新しい歪な鉱石の本領を発揮するには
夜にジャミル先輩の元へ訪れなければならないらしい。
もはや選択肢が無く追い詰められていた私は、
”想い人の部屋に夜中に訪れる。”
という暴挙を何とか成功させなければ。と
__ゴクリ。と生唾を呑んだ。