第1章 色違い 【ジャミル・バイパー】
「………わかって…いなかった。」
何もかも、俺は理解をしていなかったようだ。
「…自分自身の事も、お前の事も…何もわかっていなかった。」
自分の言い訳も、彼女の気持ちも。俺は随分鈍感で、察しの悪い人間だと自分自身に驚いた。
「俺は、お前が隣から居なくなることが恐ろしくて…ずっと言い訳をしていたんだ。」
都合が良いから、未来など無いから、此奴もいつか自分の世界へ帰るのだから。
「執着など……してたまるかと。」
思いすぎることの無いように、愛しすぎない様に。
「お前を…手放してやれなくなるから。」
涙を流すのはこんなに痛い物なのだと、俺は随分長い間忘れていた。