第5章 タルトタタン【トレイ・クローバー】
「まさか、そう答えられるとは思わなかったが。」
その思いを叶えたら喜んでくれるだろうと、
本当はそう思って仕込んだものだったのだが。
「…君の1番強い思いが俺が好き。
だったとはな…ははっ、
コレは…ちょっと照れくさいな。」
「…わ、笑わないで下さいよ。
ずっと、隠している予定だったのに…。」
1番の願いを叶えて君を心底喜ばせてから
君を貰うつもりだった。
「ごめん、ごめん。嬉しいんだよ。」
口を尖らせる顔をみて頭を撫でてから、
俺も甘いタルトタタンを1口たべて呑み込んだ。
「だいたい薬が効くまで30分だ。
それまで、このお茶会に付き合ってくれるよな?」
「………な、何してるんですか。」
「やっぱりこの紅茶は美味いな。
貴重なんだ、市場には中々出回らないから。」
30分後、彼女どんな顔をするのだろうか。
「トレイ先輩…の1番強い思い…。」
「なんだと思う?」
「……うーん、なんでしょうか。」
きっと真っ赤な林檎の様になるだろうその顔を予想しながら、俺はまたオーブンの前でワクワクする子供の様に首を傾げるを見つめた。
「(さっき好きだと言ったのに、
この顔はすっかり忘れているなぁ。)」
つい先程交わした甘い甘い口付けも、
俺からの愛の言葉も、すっきり何処かにすっ飛んでいる様子に少しため息は出たが、それもまた彼女らしく可愛らしいと思う。