第5章 タルトタタン【トレイ・クローバー】
「…心の1番強い思いを言葉にしてしまう。
そんな魔法の薬。…ただそれだけだ。」
ずっと、コチラを見つめる瞳が何を言いたいのか
わかっていたけれど、待っていた。
「…急かしたくは無かったんだ。」
「………トレイ先輩……っ…。」
「それでもどうしても食べたくて。
君の一番好きなタルトをわざわざ作った。」
何かを言おうと口が動くのをソッと唇で塞いだ。
「この紅茶には甘いタルトがよく合うしな。」
とても甘い、林檎とキャラメリゼの味がした。
「……嘘はつかせないぞ?」
「…わ…私、トレイ先輩が…好きです。」
俺は案外、疑り深くて臆病な性格だから。
「俺もがすきだよ。」
「………え?」
視線や仕草で察していても
信じられなかったんだ。
「俺ばかり君を好きだと
男して格好がつかないと思ってな。
卑怯な真似をして悪かった。」
何時も頭から離れない位、君が好きだから。
心の1番強い思いを知りたかった。