第4章 平凡な黒真珠 【ジェイド・リーチ】
「ふっ、ふふっ。なんですか、それ。
嫌味ですか?…それとも褒めてるんですか?」
彼女は特段何かが優れているという訳でわない。
容姿が端麗であるとか、声が美しいとか、
頭脳が明晰だとか、やたらと品がいいとか。
そんな特質すべき点は1つも見当たらない。
「貴方にはそれしか取り柄が無いでしょう。」
「そうですね、私にはソレしかありません。」
きっと街ですれ違っても気にもとめない。
そんな人間のはずなのに。
「ソレがあるだけで、良いんですよ。」
笑顔がやたらと柔らかくて隣にいると心地良い。
「…貴方が居なくては、息が詰まるんです。」
当たり前の様に隣に座って、当たり前に息をする。
そんな当たり前も彼女がいなければ
出来なくなってしまうんだ。
「……ジェイド先輩、私……。」
彼女が何かを言おうとした瞬間。
―ガシャーンッ。とけたたましい音が鳴った。