第4章 平凡な黒真珠 【ジェイド・リーチ】
「………え?」
そして、伸ばした手は、
幸か不幸か彼女の腕に届き、
僕はやっと呼吸が出来るようになった。
「……あの、…離して下さい。」
「…残念ながら、嫌ですね。」
「…離してっ!!離して下さいっ!!」
声を上げる彼女を自分の腕の中に閉じ込める。
「……いかないで下さい。」
自然と、口がそう動いただけだ。
「…僕を、置いていくなんて…許しません。」
だだの駄々だと言うことは分かっている。
「いなくなるならせめて、笑って下さい。
貴方は元気位しか取り柄が無いでしょう。」
無理ならばせめて、いつもの柔らかい笑顔を。
「…そんな顔の貴方を見送れと言うんですか?」
もう一度、笑って欲しい。
「僕は、貴方の笑顔が。頭が弱そうで好きなんですよ。
…僕の傍で、笑って下さい…。」
あぁ、僕は彼女が好きなんだと。
こんな時に何故かハッキリと理解してしまった。