第4章 平凡な黒真珠 【ジェイド・リーチ】
「ジェイド先輩……。あの……。」
「……………おや、すいません。
お見苦しい所をお見せしました。
あちらへ行っても元気に頑張って下さいね。
貴方には元気位しか取り柄が無いでしょうから、
ソレを損なわない様に。」
声を上げてしまい居心地が悪かった。
だから、心地の良い黒目を見ずに、早口でそう紡いだ。
「…先輩、泣かないで下さいよ。」
「…泣いていませんよ。特段、
悲しいだとかそういった感情は湧いていませんから。」
何故か頬に水が伝っているのはわかっていたが、
その理由は分からない。
「…そうですよね。じゃあ。お元気で。」
そう言って彼女は元の世界へと帰る特別な鏡へと
真っ直ぐ、進んでいった。
「…。(何で……笑ってくれないんですか。)」
最後に見た顔が、彼女らしくない寂しそうな、
元気のない顔だったからなのかもしれない。
「(何で、そんな顔で居なくなるんですか。)」
何故か異様に腹が立って、
息が詰まるものだから僕は
真っ直ぐすすむ彼女へと腕を伸ばした。