第3章 偽物王子 【ラギー・ブッチ】
「…はぁ。アンタ、本当に馬鹿っスよねぇ。」
「た、確かに私は馬鹿ですけど…。
ラギー先輩が居るから大丈夫です!!
今日だって大きなウツボさんから逃げきれました!!」
「ソレが策略なら大したもんなんスけどねぇ。」
そう、コレが策略ならば。
そんな事を考えていたら_フッ。と疑問が頭をよぎった。
「(いや、何で俺…否定しないんスか。)」
俺が守ってくれる。とでも言いたげなその発言に、俺は否定も肯定もしなかった。冷静に考えた今でさえ、肯定する気もないが否定する気も起きない。そんな事実に俺は口元を抑えた。
「(損しかねぇのに。何でだろう。)」
「ラギー先輩?…ねぇ、戻りましょ?」
腕の裾を引いて急かしてくる手も、覗き込む目も不快では無いのは一体なぜなのだろうか。
「あ、アンタは間違いなくウチの寮生っス。」
「……へ?…ん?いや、そうですけど。」
いつの間にか当たり前にそう思わされていた。目の前小動物は意をせずとも、肉食獣を上手いこと護衛として動かし初めているらしい。そうなってくると、この人畜無害そうな小動物は確実に弱者では無いだろう。そんな事実を俺はやけにすんなり理解した。
「…ぜ、絶対俺報われねぇ…。」
「え、何がですか?今日のラギー先輩何だか変ですよ?…どこかぶつけましたか?」
「誰のせいだと…。いや、何でも無いっス。」
「…。?」
この謎の現象が、もしも恋だとしたら。俺は確実にライオンの王子様に嘲笑われるだろう。けれど何となく、コレはそうなのかもしれないとまたすなり理解してしまえばそれを回避する術など見つかる気配もなく俺は屈服するしか無かった。