第5章 勝負<過去
数十分して、ようやく二人は準備を終えた。
「用意はいいな?訓練用巨人を多く切った方の勝ちだ!」
ジャンのいる木の隣の木にフーリは立った。
「ああ。訓練終了の合図までだな。」
「行くぞ!勝負開始だ!」
はじめにスピードをつけて飛び出したのはジャンだった。
ジャンは木々の間を縫うように進み、最初の訓練用巨人を見つけた。
「こいつは・・・もらったあああ!!!」
ジャンがうなじ部分を削ごうとした瞬間・・・
ザシュ
フーリがジャンを追い越して、訓練用巨人を削いだ。
「なに?!いつの間に!!」
驚いているジャンを無視して、フーリは先へ進んだ。
確かにジャンは立体起動に関してはトップクラスだ。
だがしかし、私の技術とスピードにはかなわない!!
やがて、訓練終了の合図がでた。
フーリとジャンはスタート位置に戻ってきた。
「ハア、ハア・・・俺は6体だ。フーリ、お前は?」
ジャンは息が切れているようで、言葉が続かない。
「私は、14体だ。」
「!!・・・俺の完敗だな。」
ジャンは悔しそうに拳を握ったが、やがて笑顔になった。
「今日は楽しかった。ありがとな。また、勝負してくれるか?」
「ああ。私も、珍しく楽しいなんて思った。」
そう言って、若干笑った。
フーリが片付けのために戻ろうとしたとき・・・
カシャーン
フーリのポケットから何かが落ちた。
「フーリ、何か落としたぞ?何だこれ?」
ジャンはフーリが落とした金属の欠片を拾って、まじまじと見つめた。
「・・・・・・それは銃口の欠片だ。」
ジャンは、なぜそんなものを持っているんだと聞こうとしたが、フーリの重く冷たい声を聞いてやめた。
黙ってフーリに欠片を返すと、そそくさと戻っていった。