第9章 人類の希望→感情の変化
「うわあ、ひどい傷だね。痛かったでしょ?」
ハンジは消毒液を付けたガーゼでエレンの顔の傷に当てていた。
「まあ・・・ちょっと。」
エレンは苦笑しながら答えた。
リヴァイはずっと壁に寄りかかっていたが、突然ツカツカと歩いてエレンの隣に座った。
「ヒィィィ・・・」
エレンはあからさまに怯えた。
そんなエレンに少々イラつきつつもリヴァイは
「なあエレンよ、俺を恨んでいるか?」
と聞いた。
エレンは俯いていた顔を上げて、
「いえ、必要な演出として理解しています。」
と答えた。
さらに付け加えて、
「ただ・・・俺が憲兵の人やウォール教に向かって怒鳴ったことは後悔していません。」
と言った。
先程までビクビクしていたとは思えない表情でエレンは言ったのだった。
ほう・・・おもしろい奴だな。
リヴァイに怒る様子はなく、逆に
「なぜだ?」
と聞いた。
エレンは眉間にしわを寄せて恨んでいるかのような表情になった。
「あいつらは・・・ミカサと・・・フーリにひどい事を言いました。それだけは許せないんです!!あいつらは・・・何も悪くないのに・・・!」
獣のように荒い呼吸になりながらエレンは答えた。
「そうか・・・。」
リヴァイは否定しなかった。
それはリヴァイもそのことに同感できるからだった。
もしも俺がエレンの立場だったら同じことをしただろうな・・・。
フーリが絡むと俺は冷静じゃなくなっちまう。
はっ!おかしいな・・・今までこんな事は無かったのにな。
そういやフーリは今頃何してるんだろうな・・・
「フーリ・・・何してんだろう。」
治療の終わったエレンが呟いた。
独り言のつもりだったのだろう。
だが・・・聞こえちまった。
なんだ?・・・妙に腹が立つ。
エレンがフーリの事を考えているだけでイライラする。
チッ・・・こんな俺にも腹立たしいな。
ったく・・・フーリよ。どう責任取ってくれんだよ。
・・・・・・あいつ、死にてえなんて言ってたのに初陣の時には必死に生きようとしてたな。
俺の口実の意味が通じたのか?
そう信じるか・・・
フーリ、俺がお前の生きる意味になってやるからな。
リヴァイは決心した様に窓から空を見上げた。