【TWISTED-WONDERLAND】夢物語ヒロイン!
第8章 【荒野の反逆者】前編
顔を上げた後、アズール先輩の横を通ってこの場を後にした。
しばらく背中に視線を感じたけど、気のせいだと思って、振り返らずに歩いた。
ユウ
「不幸せな人、か……」
実際そうだよね……異世界に召喚されて、魔法なんてわけのわからないものに囲まれて、まったく知らない学園で生活する羽目になってるんだから。
でも、『不幸せ』という言葉は、納得がいかない。
モヤモヤとした感情が、胸の中に残った。
◇◆◇◆◇◆
【NARRATION】
同時刻───
本校舎-階段
ハーツラビュル寮生A
「そろそろマジカルシフト大会の選手選抜の時期だな」
ハーツラビュルの寮生である2人の生徒は、マジフト大会の話に花を咲かせていた。
ハーツラビュル寮生B
「何か寮長にアピールする魔法、考えてる?」
ハーツラビュル寮生A
「当たり前だろ?こないだクルーウェル先生に見せたら好感触だったんだ」
茶髪の生徒は、そう言って得意げに笑う。
ハーツラビュル寮生A
「寮長に披露するの楽しみ……って」
彼らが踊り場から次の階段へ足を下ろした、その瞬間……茶髪の生徒が、その場から前へ向かって跳んだ。
ハーツラビュル寮生A
「うわああぁっ!?」
降り階段から飛び降りてしまった彼は、着地に失敗して転び、階段に体を打ちつけながら床へと落ちる。
ハーツラビュル寮生A
「うぅっ……痛ってぇ!」
もう一人の生徒は、それを見て大慌てで駆け寄った。
ハーツラビュル寮生B
「お、おい!どうしたんだよ、急に階段から飛び降りたりして!」
友人が自分から飛び降りる場面を目の当たりにしてしまったことに、困惑の表情を浮かべている。
ハーツラビュル寮生A
「足がっ……いてぇ……ッ!」
ハーツラビュル寮生B
「えぇっ!?とにかく、保健室に行くぞ!」
彼は、友人の怪我に気を遣いながら、保健室を目指して歩き出した。
彼らが居た場所へ、1つの影が現れる。
???
「……シシシッ♪」
その影は、怪我した生徒の背中を見送りながら、八重歯を出して笑っていた。