【TWISTED-WONDERLAND】夢物語ヒロイン!
第8章 【荒野の反逆者】前編
ユウ
「学園長が言うような才能が自分にあったとしても、結局は他力本願でしかない才能です。とても、価値があるとは思えません」
これは、私の本心だった。
アズール
「そのように自分を卑下しないで……顔を上げてください」
ユウ
「はい、すみませ……っ!?」
言われるまま視線をアズール先輩に戻して、私は思わず言葉が詰まった。
アズール先輩の微笑みが、さっきまでよりずっと深いものに見えたから。
え、なにあの愉悦に塗れたような笑み……人を励ます表情じゃなくない!?
アズール先輩は、笑みをたたえたまま自分の胸元に手を当て、こう言った。
アズール
「ああ、なんて不幸せな人なんでしょう!」
ユウ
「は、はい?」
不幸せ?
アズール
「記憶を失くし、故郷に帰ることも出来ず、望まず学園に留まることとなっただけでなく、生まれつき魔力を持っていない……さぞ、ご不安なことでしょう」
ユウ
「えっ、あの……」
アズール
「僕で力になれることがあれば、いつでも相談に乗りますよ」
アズール先輩が口にしたのは、寮長会議に向かう前、デュースが言ってくれたのと同じ言葉……だけど、違う。
ユウ
「あ、ありがとうございます……でも、今は特には大丈夫です」
この人の言葉からは、エースやデュースのような優しさを感じない。
ユウ
「友達も、助けてくれるので……」
アズール
「それはそれは……良いご友人に恵まれたようで、喜ばしいことですね」
一瞬、アズール先輩の顔から笑みが消えた気がしたけど……すぐに元の微笑に戻った。
アズール
「学園で生活しているうちに、そのうちお悩みやお困りごとも出てくるでしょう。その時は遠慮なく、オクタヴィネルにいらしてくださいね」
ユウ
「はい……ありがとうございます」
私は、アズール先輩に頭を下げる。
ユウ
「では、僕はこれで、失礼します」
アズール
「ええ、お気をつけてお帰りください」