【TWISTED-WONDERLAND】夢物語ヒロイン!
第7章 【真紅の暴君】後編
みんなで片付けて薔薇も植え直したから、元通りの美しい薔薇園に戻ってるけど……
リドル
「………」
ユウ
「………」
リドル寮長は、ここに来て平気なのかな……
わざわざこの場所を選んだのは、リドル寮長の話と関係があるのだろうか。
急かす気にはなれなくて、私はひたすら、リドル寮長の言葉を待つ。
リドル寮長は私に背を向けたまま、静かに口を開いた。
リドル
「……ボクは、ボクがオーバーブロットした時のことは、あまり覚えていないけれど」
ユウ
「は、はい」
オーバーブロットは魔法士の暴走状態……記憶は曖昧にしか残らないものらしい。
リドル
「意識を失っていた間、夢を見ていたんだ……幼い頃のボクを」
ユウ
「!え……」
リドル
「その夢の中で、キミとトレイの声が聴こえた。もう目を覚ますことを諦めていたボクを、キミとトレイが呼んでくれたんだ」
あの時、『もう目覚めなくても』と、リドル寮長は“言っていた”。
私が見た景色も聴いた声も、全部夢だったかもしれないけど………私とトレイ先輩の声は、ちゃんとリドル寮長に届いたんだ。
ユウ
「リドル寮長が目を覚まして、本当に良かったです」
リドル
「……うん」
リドル寮長の声が少し小さくなる。
リドル
「だから、キミには……ちゃんと、伝えなくてはいけないと思って……」
ユウ
「はい」
リドル
「…………ありがとう」
小さく放たれた一言に、私の胸にはじんわりとした温かさが広がっていく。
私は、リドル寮長の背中を見つめながら、今思ったことをそのまま伝えようと口を開いた。
ユウ
「リドル寮長」
リドル
「な、何だい……」
ユウ
「声が小さいです」
リドル
「は!?」
ユウ
「そういうことは、せめてこっち見て言いましょうよ」
いや、聞こえてたよ?ちゃんと聞こえたけども……感謝の言葉を正面切って言えないなんて、どんな照れ屋さんだ!