【TWISTED-WONDERLAND】夢物語ヒロイン!
第1章 【WelcomeToTheVillains'World】前編
私は……今、異世界に居るってこと?
クロウリー
「貴女、ここへ来るときに持っていたものなどは?身分証明になるような、魔導車免許証とか靴の片方とか……見るからに手ぶらですけど」
ユウ
「免許証って……私まだ16歳ですよ?車どころかバイクの免許だって……」
そうだ、高校の生徒手帳があった……あれ?
ユウ
「な、ない!生徒手帳が……財布もスマホも!」
そもそもこのローブでさえ、私は着た記憶がないんだった。
当然、靴も見たことないもの。
クロウリー
「困りましたねえ。魔法を使えない者をこの学園に置いておくわけにはいかない……それに、貴女は女性ですし」
呟くクロウリーさんに、私は血の気が引く思いをした。
グリムみたいに、追い出されるかな……この状況で野宿はキツい!
クロウリー
「しかし保護者に連絡もつかない無一文の若者を放り出すのは、教育者として非常に胸が痛みます。私、優しいので」
ガシッ
ユウ
「優しい学園長さん、どうかこのまま追い出すのだけは……!助けて下さい!」
縋るように私は、クロウリーさんの両手を掴んでギュッと握った。
クロウリー
「う〜ん…………そうだ!」
暫く私を見つめた後、クロウリーさんは明るい声を出した。
クロウリー
「学園内に、今は使われていない建物があります。昔、寮として使われていた建物なので、掃除すれば寝泊まりぐらいはできるはずです。そこであれば、しばらく宿として貸し出して差し上げましょう!」
ユウ
「!ありがとうございます!!」
クロウリー
「その間に、貴方が元いた場所に帰れる方法を探るのです。あ〜、なんて優しいんでしょう、私!教育者の鑑ですね」
自画自賛が凄いけど、とりあえず助かった!
クロウリー
「では、善は急げです。寮へ向かいましょう」
ユウ
「はい!」
椅子から立って、クロウリーさんの後に続く。
クロウリーさんは歩き出す前に、一度私を振り返って、
クロウリー
「少し古いですが、趣のある建物ですよ」
仮面の奥の目を細めて微笑んだ。