【TWISTED-WONDERLAND】夢物語ヒロイン!
第7章 【真紅の暴君】後編
トレイ
「リドルは、厳しいルールで縛ることが相手のためになると思ってる。厳しいルールで縛られて、恐れで支配してこそ成長できると信じてるんだ……かつて自分がそうだったように」
トレイの目が、エースに移る。
トレイ
「そして、ルールを破るのは絶対的に悪だと思ってる。だって……」
エース
「ルール違反を肯定すれば、ルールによって造られた自分の全てを否定することになる……ってこと?」
トレイ
「……」
トレイはエースに頷いた。
トレイ
「お前達がリドルを横暴に思うのはわかる。リドルのやり方が正しくないことも。だけど、俺には……やっぱり、あいつを叱ることなんて出来ない」
グリム
「ふなぁ……」
トレイの話を聞いて、グリムは目に涙を浮かべていた。
デュース
「寮長にそんな過去が……」
デュースは、それ以上言葉が続かない。
エース
「…………」
エースだけは、話を聞く前と同じような、眉間にシワを刻んだ表情でトレイを見つめていた。
エースが何か言おうと口を開いた……その時、
「ぐす……」
「「「「!」」」」
誰かが鼻を啜る音が、4人の耳に届いた。
トレイは、エース達の後ろにある本棚に目を留め、そこに向かって歩き出す。
トレイの耳には、声を押し殺した泣き声が確かに聞こえていた。
エース
「!おい……」
デュース
「エース」
エースがトレイを止めようと動くのを、デュースが手で制する。
やがてトレイは……
トレイ
「……そこに居たのか」
本棚の陰に座り込んで泣きじゃくる、ユウの姿を見つけた。
【HEROINE side】
トレイ
「ユウ?」
ユウ
「ひっく、ひっく……トレイ…先輩……ううっ」
頭上からトレイ先輩の声が聞こえて、私は涙を拭いながら立ち上がった。
トレイ先輩と向かい合うと、また胸の中に後悔が溢れてくる。
ユウ
「僕、僕……ごめんなさい……!」
トレイ
「お前が謝ることは何もないよ」
トレイ先輩の手が、私の頬に触れる。
私は顔を上げて、トレイ先輩の目を見つめた。
湿布を貼った頬を、躊躇いがちに撫でられる。
トレイ
「お前は何も悪くないのに、殴って悪かった……本当にすまない」