第2章 命の代価
違う所といったら、初めて見た時はフードでほとんど認識できなかったが顔が、今は砂ぼこりと銃弾の勢いでフードが落ちてしまい顔がはっきりと認識できることだ。
透き通るような碧眼に泣き黒子。
色白肌に金髪のショートヘアーだが、片眼は流された前髪で隠れてしまい見えない。
コートを羽織っているため正確ではないが身長はエドと大差なく、体格も同じくらいだろうか…。
「なっ誰だっ!どうやってここに入ってきた!!」
教主はコートの人物に銃が発砲される。
エドが咄嗟に壁を錬成しようとするが、それより早くコートから腕を出し、指をパチンと鳴らす。
するとどういうことか、銃弾が雷によって焼き焦げ、カラカランッと空しく音を立て落ちる。
「…!!今のって…」
「…ああ、どっかの誰かさんと一緒だな、ただ…」
エドはコートの人物の腕に目をやる。
手には黒い軍手をしているものの、エド達が思ったような錬成陣らしきものは見当たらない。
「一緒だけど、違う。錬成陣が見当たらない」
「嘘だ…!そしたらこの人も…」
「いや、身体に直接錬成陣を描くことも可能だと思うが…」
突然の事態に一同茫然である。
その原因である張本人が口を開く。
『おい、お前』
その言葉と視線の先にいるのは教主。
『その指輪…いや、その石。どこで手に入れた。何故お前のような奴がそれを持っている』
(やっぱり…!こいつも賢者の石目当てか…。このままだと先越されんじゃ…)
コートの人物に物申そうと声を掛けようとするエド。
しかし、またも電気が走ったと思ったらそこにいたはずの人物はいない。
消えてしまったのか。
エドとアルが驚いていると、「う、ぎゃぁあああああ」と教主が悲鳴を上げる。
教主の方へ視線を移したエドとアルは自身を疑った。
教主の元にコートをはためかせ、そこにいるではないか。
柵に片足を付き、教主の指輪のついている左腕を捻り上げている。
指輪をじっと見つめ、そして「ちっ」と舌打ちして左腕から手を放す。
目を丸くしてコートの人物を見上げる教主に
『時間の無駄だった、お前に用は無い』
そう呟き、柵から地面に着地するとそのままスタスタと出口に向かって行くではないか。
それを見て呆気にとられる教主の目を盗み、アルがロゼを連れて行く。
それに気づいた教主はアル目がけて銃を発砲する。