第4章 錬金術師の苦悩
エドとアルも自分達の部屋に戻り、体を休める。
「兄さん、大丈夫?」
「ああ、あいつ死ぬ覚悟でとかなんとか言ってたくせして最後の最後で加減しやがった」
そう言って布団に飛び込むエド。
「アル、あいつは強い、俺達よりもずっと」
「うん、そうだね」
「でも…っ」
体を起こし、アルと向き合うエド。
「強さ以前にあいつの事まだまだ知らな過ぎるな。アル、あいつが教主の指輪を見た時なんて言ったか覚えてるか?」
「えぇっと、『時間の無駄だった、お前に用は無い』だった気が…」
そこでアルも違和感に気づく。
「そうだ、あいつ視力を持って行かれてんだろ?それは本当だと思う。現に外見は普通だったからオレ達も疑惑は持っても確信を持てなかったんだし。ただ、賢者の石を見て、『用は無い』とあいつは言った。目の前に求めたものがあるのに。もしかしてあいつはあれが偽物だって気づいてたんじゃないかって…」
「あの子の過去に一体なにが…」
「…さぁ、今は知れそうにないけど。多分オレ達よりもずっと重いもん背負って生きてきてるはずだろうな」
ふと窓の外に視線をやるエド。
ポツリポツリと雨が降り始め、雷が響きだす。
何か不吉な物を思わせる黒い雲。
「嫌な雨だな、なんか」
ボソッと呟き、エドは眠りに落ちていく。