第2章 命の代価
「兄さんは左足を失ったままの重傷で…今度はボクの魂をその右腕と引き替えに錬成してこの鎧に定着させたんだ」
先ほどまで無言だったアルが自分達の過去を語る。
「二人がかりで一人の人間を甦らせようとしてこのザマだ…。ロゼ、人を甦らせるってことはこういうことだ。その覚悟があるのか?あんたには!」
エドの言葉にロゼはビクッと肩を震わせる。
「くくく…エドワード・エルリック!!貴様それで国家錬金術師とは!!これが笑わずにいられるか!?」
「うっせーんだよ。石がなきゃ何にもできねぇどサンピンが!」
「なるほどなるほど、それで賢者の石を欲するか。そうだなあ、これを使えば人体錬成も成功するかもなぁ?」
「カン違いすんなよハゲ!石が欲しいのは元の身体に戻るためだ。もっとも元に戻れるかもだけどな…!」
アルが再度教主に問う。
「教主さん、もう一度言う。痛い目見ないうちに石をボク達に渡してほしい」
しかしそんな二人の言葉を無視するように、教主は自らの杖を銃に錬成させる。
「くく…神に近づきすぎ地に堕とされたおろか者どもめ…。ならばこの私が今度こそしっかりと…神の元へ送りとどけてやろう!!」
ガシャっという機械音と共にエルリック兄弟目がけて銃を乱射する教主。
辺りは砂ぼこりに包まれる。
誰もが二人の死を確信するだろう。
「ははははははははは、は……!?」
確かに教主はエルリック兄弟目がけて銃を撃った。
目標の目の前は教主の銃弾で確かに攻撃されているはずだった。
しかし、巻き上がる砂ぼこりに僅かに電気が走るのが見えた。
そして先ほどまでいなかったはずの人物がエルリック兄弟の前に出るように現れた。
見覚えのある黒いフードのついたコート。
ここまで近くで見て、初めて気づく。
コートの素材はセントラルの軍人が羽織るコートと同じであることに。
「お前……!あの時…」
エドがいきなり現れた人物に問いかける。
間違いなくあの時あの場所にいた人物だ。