第1章 2人の錬金術師
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「ロゼの言ってた教主の部屋ってのはこれか?さて…」
部屋の前に立つと自然と扉が開く。
中に入ると、その扉は再び自然と動き、音を立て閉じた。
「神聖なる我が教会へようこそ。教義を受けに来たのかね?ん?」
「ああ、ぜひとも教えてほしいもんだ。せこい錬金術で信者をだます方法とかね!」
挑発するようにエドが教主に問う。
「さて、何のことやら…」と言う教主に対し、エドは無遠慮に話し出す。
「見せてもらったよ。で、どうにも腑に落ちないのが法則を無視した法則がどういう訳か成されちゃってることなんだよね。そこで思ったんだけど…“賢者の石”使ってんだろ?」
“賢者の石”と聞いて教主の穏やかな笑みは消える。
「例えばその指輪がそうだったりして?」
「ふ…流石は国家錬金術師。すべてお見通しという訳か」
そして教主は指輪が“賢者の石”であること、己の野望、全ての本性を明かす。
高笑いをする教主に、パチパチと拍手をし、
「いやーーさすが教主様!いい話聴かせてもらったわ。たしかに信者はオレの言葉にゃ耳もかさないだろう。けど!彼女の言葉はどうたろうね」
すると、アルの空っぽの鎧の中から顔を青くしたロゼが姿を現す。
「ロゼ!?いったい何がどういう……」
「教主様!!今おっしゃった事は本当ですか!?私達をだましていらっしゃったのですか!?奇跡の業は…神の力は私の願いをかなえてはくれないのですか!?あの人を甦らせてはくれないのですか!?」
涙を浮かべ、訴えるロゼに薄く笑みを浮かべながら教主は、
「ふ…たしかに神の代理人というのは嘘だ…。だがな、この石があれば今まで数多の錬金術師が挑み失敗してきた生体の錬成も…おまえの恋人を甦らせる事も可能かもしれんぞ!!」
アルとエド、教主の3人からロゼに向けられる言葉にロゼは震えが止まらなくなる。
そしてロゼは……
教主の元へ一歩、また一歩と歩み寄る。
「二人ともごめんなさい。それでも私にはこれしか…これにすがるしかないのよ」
エドとアルの方を振り向きそう言ったロゼ。
エドはため息を漏らしている。
「いい子だ…本当に…。さて、では我が教団の将来をおびやかす異教徒はすみやかに粛清するとしよう」