第4章 錬金術師の苦悩
「そんじゃ遠慮なく…」
パンッと手を打ったエドの手には自分と同じ身の丈の槍を錬成される。
間合いを詰め、リビアに向けて勢いよく半円を刻む。
しかしそこには人の姿はなかった。
(やっぱ早いな…っ)
すぐさまリビアの姿を探そうとするが『遅い』と後ろから声が響く。
振りかぶった槍の上にリビアが立っている。
そのままエドの顔面向けて蹴りを入れる。
鼻を掠めたがギリギリ避けた。
「くそっ顔面狙いやがって…」
鼻を押さえ、持っていた槍をリビアに向かって思いっ切り投げつける。
加速しながら飛ぶ槍は間違いなく標的に突き刺さる勢いである。
エドと同じ様にパンッと手をならすリビア。
初めて何かしらのモーションを見せた…が、錬成では無かった。
飛んできた槍を手ではじくとボロボロっと一瞬で崩れ去っていた。
「…は…?なんだ…?」
初めて目にする光景であるらしい反応を見せるエド。
しかし、そんなエドを気にすることなくリビアはエドの後ろに回り込む。
『後ろがガラ空きだぞ』
振り返るエドの腹部にリビアの膝がめり込む。
「がはっ」とむせるエド。
しかし、ニヤッと笑うとすかさずリビアを押し倒し、腕から指先にかけて錬成で拘束させ、自分の機会鎧に錬成した刃をリビアの喉元に突きつける。
「っ捕まえたぞ、いってぇな、畜生…」
エドは蹴りを受けた腹部を片手で押さえ、リビアに馬乗りのまま大佐に向かって叫ぶ。
「大佐―、勝負あったぜー!!」
しかし、そんなエドを見てふっと鼻で笑う大佐。
それを不思議そうに見つめるアル。
「鋼の、この勝負君の負けだ」