第4章 錬金術師の苦悩
「うは…すげーなこりゃ……」
「ああ、大佐のあれ見るの初めてか」
「あ…ハボック少尉」
「いったいどうやったらあんな事ができるんですか!?」
大佐の焔によって破壊され未だに煙を上げている地面と大佐を見つめながら話すハボック少尉。
「大佐の手袋は発火布っつー特殊なのでできててよ。強く摩擦すると火花を発する。あとは空気中の酸素濃度を可燃物の周りで調整してやれば…『ボン!』だそうだ」
「理屈はわかりますけどそんな…」
「それをやっていけるのが錬金術師ってやつよ。ちなみに大佐のとなりにいるちっこいの二人も国家錬金術師だぞ」
そう言って大佐の横にいるエドとリビアを交互に指さす。
「え!!じゃあ今回犯人全員を捕り押さえたのって……」
「信じられんな…」
「ああ…人間じゃねぇよ…」
〇第4章〇 錬金術師の苦悩
「今回の件でひとつ貸しができたね、大佐」
ニヤリと笑い肘をつくエド。
「……君に借りをつくるのは気色が悪い。いいだろう、何が望みだね」
苦笑交じりに溜息を一つつく大佐に見向きもせず、「さっすが♪話が早いね」と笑ったかと思うとまっすぐある方向に指をさす。
その先にいたのはソファーに腰かけて目を閉じるリビア。
「こいつの事、教えてくれ。」
「『雷華の錬金術師』だ。君と同じ十二歳で国家錬金術師の資格を手に入れた逸材だよ。さっきも話したじゃないか」
「ちげー!それはさっき聞いた!知りたいのはそこじゃない!こいつは大佐みたいに指を擦り合わせて雷を発生させた。でも大佐みたいに発火布らしーもんも見当たんねぇし、錬成陣も見当たらねぇし…」
苛立つエドを横目に見て、相変わらずソファーに腰かけ目を閉じるリビアに目を向ける。
「鋼の…、それは私だけの判断では話すことはできない。リビアの過去に触れることになる」
すると、先ほどまで全くと言っていいほど動かず話さずだったリビアがソファーから立ち上がり、大佐の傍まで行き、窓に寄りかかる。
僅かに射す日の光がリビアの金髪を照らしいっそう美しく輝かす。
碧眼でまっすぐエドを見つめられたエドとアルに一気に緊張が走る。
『別にいいよ、大佐。所詮、過去は過去でしかない』
一呼吸置き、リビアは自身について語り出す。