第72章 *猛追ハンター*
真剣な眼差しが真っすぐに刺さり、差し出された手は僅かに震えていた
ユウ『レイラ...』
エペル『レイラちゃん..』
痛いほどの静寂が辺りを包み込む。互いに真剣な表情の2人を、ユウとエペルは固唾を飲んで見守る
裏切り者だと思っている相手と共に箒に乗って飛ぶということは、その相手に自分の全てを預けるのと同義であり、申し出を受け入れる事がどれだけ重要なのか、ユウはよく分かっていた
『...や』
ルーク『...』
エペル『あっ..』
ふいっとそっぽを向く拒否の意志を示され、ルークの胸に鋭い痛みが走る
ユウ『(やっぱりダメか..)』
ルーク『...そう、か。いや、そうだろうね。少し調子に乗りすぎていたようだ。君の怒りが収まった訳ではないのに身勝手な行動だったよ』
珍しく本気で落ち込んでいるのがありありと分かるほど暗い面持ちで、そっと地に目を伏せた
ルーク『時間も惜しい。気を取り直して出発しよう』
エペル『ルークサン..』
元気のない笑みで箒に跨り魔力を込め始める。その寂しげな横顔に気まずいながらも、エペルは同じく箒に跨る
すると、そんな彼の横をふと黒い影が通り抜ける
ユウ『あ..』
『嘘...』
ルーク『レイラ、くん?』
箒を掴むその手に温かく小さな手が添えられ、驚いて真横を向くと、愛らしい微笑みが目の前にあった
『..ちゃんと守って、ね?』
エペル『ユウクン、これって..』
ユウ『許したわけじゃないと思う。それでも、レイラはあの人に自分を預けることを選んだ。つまり、そういうことだよ』
ルーク『いい、のかい?』
『狩人さんから誘ったのに聞くの?いいよ。だから、その代わりちゃんと守ってね』
ルーク『..ウィ。必ず、君を守ると誓う。私の全てをかけて、何者からにも』
少し泣きそうになりながらも喜びを噛み締めるように目を細めると、自分の前を少し空けて乗るスペースを作った
そこにまたがると後ろから抱きしめられる形で片腕が腹に回り、しっかりと固定された
ルーク『では、嘆きの島へ』